何を見ても何かを思い出す

自分用映画と本と日常メモ。ブログ名はヘミングウェイの短編から拝借。だいたい何を見ても何かを思い出すので。

私が、生きる肌

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DVDで『私が、生きる肌』を見ました。ジャケットのビジュアルがいいですよね。『エクス・マキナ』に似ている。つまりすこしSFっぽいんですよね。内容はSFではないんですが、面白かったです。

 

10秒で分かるあらすじ

軟禁されてる女性→メイドの息子がたずねてくる→実は息子は強盗して警察に追われていた→軟禁中の女性をレイプ→皮膚科医が強盗を射殺→実は強盗と皮膚科医は異父兄弟(二人はそれを知らない)→皮膚科医の過去が明らかに→妻はかつて強盗とかけおち→その途中で事故に会い全身やけど→一命を取り留めたが自殺→そのトラウマで娘は精神不安定→娘がレイプ未遂される→娘も自殺→レイプ魔を見つけて皮膚科医が監禁→性転換・整形・皮膚移植を施して妻に似せる→妻に似せたレイプ魔を愛すように→レイプ魔、皮膚科医とメイドを射殺→家に帰るでエンド。

 

もっとマッドサイエンティスト的な描写が多いと期待していましたがそんなことはなく、むしろ皮膚科医があまりにも典型的な理系男子で胸が痛かったです。

 

詳しいあらすじ

世界的な形成外科医ロベル・レガルが暮らすトレドの大邸宅の一室に、ベラと名乗るの美しい女性が、レガル家で古くから働く初老の家政婦マリリアの監視の下、軟禁されている。ベラはロベルの妻ガルに瓜二つであるが、実はガルは12年前に交通事故で全身火傷を負い、非業の死を遂げていた。

その後、ロベルは妻を救えたかも知れない「完璧な肌」を作り出すことに執念を燃やし、ベラを実験台にして自らの開発した人工皮膚を使って彼女を亡き妻の姿に作り変えていたのだ。そんなロベルをベラは誘惑するが、ロベルはベラに惹かれつつも彼女の誘惑を拒む。

そんな或る日、マリリアの息子セカが強盗を働いて指名手配される中、匿ってくれと屋敷に現れる。マリリアはセカを渋々屋敷の中に入れるが、セカはベラの存在を知ると、ロベルが留守であることを好い事に、彼女をガルと思い込んで無理矢理ベラの軟禁されている部屋に押し込み、ベラを犯す。然し、ベラは自分を屋敷から救い出してくれとセカに頼むと、セカの望むままに抱かれる。其処にロベルが帰宅し、セカを射殺する。 

ロベルがセカの遺体を埋めている間、マリリアはセカがロベルの父違いの弟であり、ロベルの実母が自分であることをベラに語る。セカの父親は使用人だが、ロベルの父親は先代のレガル家の主人であり、正妻に子ができなかったため、主人とマリリアの間に生まれた子をレガル家が引き取り、マリリアに世話をさせて育てたのだ。 

そして、今回と同じように警察から逃れて来たセカを匿ったことを切っ掛けに、ロベルの妻ガルがセカと不倫関係になり、駆け落ちの途中で交通事故に遭って大火傷を負ったこと、又一命は取り留めたにもかかわらず、自らの焼け爛れた姿を苦にして部屋の窓から投身自殺したこと、更にロベルとガルの娘ノルマが母の自殺を目撃して心に大きな傷を負い、その後同じように自殺したことを、マリリアはベラに語って聞かせる。

その夜、ロベルとベラは肉体関係を結ぶが、セカの陰茎によりベラの性器が傷付けられた為に、ことを成し遂げられないまま、2人は眠ることにする。そして、2人の回想として、ベラの正体が明かされる。

6年前、ロベルと娘ノルマは知人の披露宴に出席していた。ノルマは母の非業の死で精神を病んでいたが、その頃には状態が落ち着いており、披露宴会場で出会った地元の仕立て屋の息子ビセンテと一目で惹かれ合う。薬とアルコールの勢いも有り、2人は庭の叢で関係を結ぼうとするが、その途中でノルマが発狂する。慌てたビセンテはノルマを殴って気絶させて逃げ出すが、その様子をロベルに目撃されてしまう。ノルマは完全に正気を失い、父であるロベルのことすら分からなくなる。

ロベルは娘の復讐の為に、ビセンテを誘拐して監禁する。そしてノルマが自殺すると、ロベルは屋敷内の手術室でビセンテに性転換手術を施す。更にロベルはビセンテの顔を整形し、自ら開発した人工皮膚を使って亡き妻ガルに似せて行くと、「彼女」にベラの名を与える。 ロベルを愛していると云うベラをロベルは信用する。

そして漸く結ばれることになった2人だったが、ロベルが油断した隙に、ベラはロベルが隠し持っていた拳銃を盗み出すと、ロベルを撃ち殺す。銃声を聞いて駆け付けたマリリアも撃ち殺したベラは、屋敷を逃げ出し、生まれ故郷に戻る。そして母に自分がビセンテであることを告げる。

出典:ウィキペディア

 

悲しき理系男子

見終わった後に思ったのは、 「典型的な理系男子や…」ということ。そう思った理由を箇条書きにしてみた。

 

・どう考えても恨まれてるはずなのに、信用しちゃう(だって妻に似てるから)

・ピストルで撃たれてもなお「約束したのに…」とか言っちゃう(約束とかそういうレベルの話じゃねーだろ)

・そもそも駆け落ちされている

・娘の気持ちも分かってない

・女の扱いが分かってない

・見た目に騙されすぎ

 

なんかもう切ない。さらって性転換・整形・皮膚移植(かなりエグそう痛そう)軟禁までしてて、どう考えても殺すほど恨まれてるに決まっているのに、顔が妻だから信じてしまう。結局のところ、妻のことも愛していなかったのだと思う。彼が愛していたのは自分の中にある理想の女性だ。だから逃げられるんだよ、と女の私は思う。

 

そもそも、妻(自殺する前の本来の妻)との描写がほとんど無いんですよね。あるとすれば、不倫して駆け落ちした途中で事故にあって全身やけどを負った妻のエピソードのみ。まるで愛し合っていたから妻が忘れられないかのようにロベルは思っている(ように描かれている)けど、おそらく彼らは一度も心から愛し合ったことがないのではないか。 

 

だいたい、娘のことも何一つわかっていない。分かっていないというか、分かってるけど見て見ぬふりをしているというか。ビセンテがノルマの下着を履かせ、スカートを整えて去っていく場面を写したのはうまくて、レイプ後にあんなに身なりが整っているわけがないのは、おそらくロベルも気づいているはずなのだ。なのにそれにあえて気づかないふりをしつづけて、ビセンテが記憶のないことを良いことに、レイプ魔と糾弾してビセンテを良いように利用していく。

 

ロベルははじめからビセンテに復讐しているわけではないのだ。妻をなくし娘をなくし、しかもその真意が死んだ後も理解できず、どうすればいいか分からなくて、同じ人形を作りたかっただけなのだ。

 

しかも同じ人形ができたらその違和感に気づくかと思いきや、むしろ昔以上に(本物の妻以上に)満足してしまうのだ。ロベルがほしかったのは何だ?自分を全肯定してくれるもの、全能の美しい女神か?

 

でも男性って多かれ少なかれそういうところがあると思う。母性と聖性と少女性を併せ持つ、完璧な理想の女性像は誰しも持っている。でももちろん現実にはそんな女性はいないので、現実とすりあわせてなんとか恋愛したり結婚したりして、「現実は理想とは程遠いけど、これも悪くないな」とか思って生きていっているわけである。

だからまあ切ない。切ない話でした。

 

その他感心したところは、

・皮膚科医、監禁された男の子どちらも恨めないように作ってあるのはすごい。

・てゆーかあんな背の低いのどうやって見つけてきたのか?オーディション?

てとこかな。あととにかく女優が美しい。なんのファンデーション使ってるんだ?あ、あと、ベラにメイク道具を送るとき、それがすべてシャネルだったところも「理系男子…」と思いました。